愛媛県美術館で行われた、写真家、白川義員さんのトークショーを聞きに行った。
日本より、海外で評価の高い写真家でもある。
何回もノーベル平和賞の候補に挙がっているということを知っている日本人は少ないと思う。
この方の出会いは、高校時代にさかのぼる。
白川さんと私は共通の恩師を持つ関係だけで、直接の交流はない。
ただ、ニューヨークタイムスをはじめとする世界の新聞社で大きな評価を得たヒマラヤ写真を撮った後、日本に帰国したとき、恩師のおかげて話をすることができた。
白川さんは、恩師、藤本先生を訪ねてきたついでに、先生の下でクラブ活動をしていた生徒にいろいろ話をしてくれた。
暗くした教室の壁に映し出されたヒマラヤの姿は今でも脳裏に焼き付いている。
ちょうど親にカメラを買ってもらったばかりの私の写真を見て、いい写真だよっと言ってくれた小さな励ましを忘れない。
今日のトークショウで、私に会った時は彼の不遇の時代であったと知った。
外国では、先ほど書いたように評価が高かったにかかわらず、日本での評価は低かったという。
私たちに話してくれた時は、いろいろ大変な時だったようである。
今日の話の中で、私の高校時代に話さなかった話がでできた。
撮影で、危険が多く大変だったという事はしきりに言っていた。
しかし、日本人だということで、水をかけられたりした人種差別のことは一切なかった。
今日の話の中では、日本人だと分かると、バケツで水をかけられるなど数多く差別されたことを話していた。
だぶん、私たちに話したときは、これから外国に行くかもしれない高校生に配慮してくれたのだと思う。
若いころ、私もいろいろ嫌な思いをした。
ドイツの列車に乗り込んで、席に着いた途端、隣の老人に杖で叩かれたこともある。
お前の座るところではない。
と。
同じくドイツで、重たい荷物を列車に積み込むのに困っていたお婆さんの荷物を、 代わりに運び上げようとした途端、手を思いっきり叩きはらわれたこともある。
メキシコでは、ホテルに泊まろうとしてフロントに行くと、お前が泊まるホテルではないと言われたこともある。
フィレンツェのドミトリーで部屋飲みをしようと思い、酒屋でワインを買う際、 棚にあるワインを選んでいると、イタリア語で延々と説教をくわされたこともある。
お前が飲むワインは、店先に野積みしている300円程度のワインだと。
私が若い時に経験したことは、今まで私の振る舞い方が悪かったせいだと思っていた。
しかし、今日の白川さんの話を聞いていると、あれは陰険な人種差別だったのだと気づかされた。
今日の写真は日本の秋のものである。
白川さんはしきりに強調していた。
日本の風景は世界に誇れるものである。
とくに、秋の紅葉は他の国にはないものであるという。
そして、白川さんは言っていた。
今の日本で、親を殺したり、子供を殺したりする、昔では考えられない社会になったのは、日本人が自然を大切にしなかったためであると、何度も繰り返して言っていた。
自然に対して、傲慢な気持ちがそうさせたと言っていた。